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本を読まない母、文を書く

初瀬



ある日、母が「書いた文章を見てくれ」と言ってきた。

とても驚いた。本を読めば数分で寝てしまうのに…昔、「本ばっかり読んでないで外で遊びなさい」と怒っていたのに…。


なんでも、教会の会報誌みたいなものに記事を投稿する担当になったらしい。

母はキリスト教である。


ここ誤字だね、とか、この文わかりづらいからこことここ入れ替えたらどうかな、とか思いついたことを言った。

ふんふん、とまじめに聞いていた。


私が実家を出てからも定期的にメールが来て、それに返すというのが続いている。書くのに慣れたのか、こちらが読むのに慣れたのか、最初の頃よりずっと読みやすい。

毎回、聖書の中に書いてあることや神様のことなどと、身の回りにあった出来事を結び付けて書くというのがその記事のルールのようだ。


この間は、実家の庭に植えてある花を植え替える話だった。

夏から秋になったので花の植え替えをするそうだ。

『神様は人間を土から作られたと言われます。元となったものに触れるから、癒されるのかなぁと思いました。』

いいなと思った。

道路に面した実家の小さい庭とプランターから、人間が来たところに(それとたぶん、行くところに)ふわっと意識が飛んでいく。

感性が独特だなと思うことはよくあったけど、書いた文章を見るようになってからそれが目で見てわかる。

編集者とかプロデューサーとかこんな気持ちなんだろうか。「この良さを分かち合いたい!伸ばしたい!広めたい!」のような。

残念ながら私は何者でもないのでひとりでいいなと思うことしかできなくて、それが少しもどかしい。


母の成長は続く。

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