初瀬
プログラミングの本で、だいたい一番最初に出てくる課題が「画面『Hello,world!』と表示されるプログラムを作りましょう」だ。
昔の人がなんとなくやったことが伝統みたいになって、今でもそうなっているらしい。
初めてプログラムを作った人が、あるいはそのプログラム自体が、初めて出会った世界を前にして「こんにちは、世界」ってなんかすごく素敵だ。
最近、ダイビングのライセンスを取った。種類がたくさんある中での、入門編みたいな位置づけのものだけど。全然知らなかった世界に行ける。
1年前に体験で潜った石垣島の海。
その時はライセンス取るほどは乗り気にならなかったけど
時間が経つとやっぱり取りたくなってきて、家から通えるダイビングショップで取ることにした。筆記の勉強、プール実習、海洋実習の順にやっていく流れになっている。
陸上と水中はいろいろなことが違っていて、それが面白いし、怖い。
呼吸すると、聞き慣れない、シュコー…ゴポゴポゴポ…みたいな音がして、自分がどれくらいのペースで呼吸しているのかわかってきて、そのうちわからなくなる。あれ、今吸ってるんだっけ?吐いてるんだっけ?そういえば喉が渇いてきたし、息がしづらい気がする…思ってもいない方向に体が傾く。
そうならないために、なっても落ち着きを取り戻せるために、意識して呼吸をゆっくりにする。
呼吸はすごい、落ち着けと言われて落ち着くのはめちゃくちゃ難しいが、呼吸を落ち着けると気持ちも落ち着く。慌てていると全くできなかったことが、落ち着くとできるようになる。
人生の中でこんなに「呼吸!」と言われたのは初めてだった。鬼殺隊に入ってしまったのかと思った。(鬼滅の刃の話です)
空気を入れた風船を水に沈めるとものすごい力で風船は外から押されるし、反対に、もともと水の中にあった風船をそのまま引き上げると膨張して、たぶん風船は割れる。
この「空気を入れた風船」が、人間でいうと肺とか耳とかで、正しい手順に沿わないとそんな風船のようになり、命に関わる。
どう考えても人間は水の中にいるには向いてないのに、いろいろな方法を取って
水の中にいようとして、人間ってすごいなと思った。空にも、宇宙にも行こうとするし過去や未来にも行けたら行ってしまうだろう。
車に乗れるようになったみたいに、できないことができるようになった。
身に着けている重りとか、ジャケットの中の空気をちょうどよくすれば自分の肺の中の空気の量だけで体の浮き沈みの調整ができるようになって、足を動かさなくても息を吸い込むと体が浮くし、息を吐くと沈み始める。
8月10日、わたしはこっそり感動していた。なにこれすごい、空気は水よりも軽いことがよくわかりますね、自分が被験者の実験みたい。
「初心者なのにバランス感覚すごくいいね」と言ってもらえた。陸上ではこんなに姿勢悪いのに。
ダイビングは出来るゾーンが決まっていて、
実習で行ったところは、こっち側はダイビングの場所、向こう側は釣りの場所、と分かれている。
向こう側で釣り人に釣られる魚と、こっち側でダイバーから餌をもらえる魚に思いを馳せ、帰りはお刺身を食べた。